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介護職の給与が低すぎる?現場から見た“待遇改善”のリアル

  • 執筆者の写真: 諒 加藤
    諒 加藤
  • 5月14日
  • 読了時間: 4分

先日、X(旧Twitter)で「介護職の給与が低すぎる」という投稿が大きな反響を呼びました。

「介護職は重労働なのに年収300万円台が当たり前」「人の命や尊厳に関わる仕事なのに、待遇が見合っていない」——そんな投稿に対して、現場で働く多くの介護職の方々から共感や怒り、そして切実な現実を訴える声が相次ぎました。

私は千葉県で訪問看護ステーションを運営する経営者ですが、日々、介護職の方々と密に連携を取りながら利用者支援を行っています。彼らがどれほど献身的に、そしてプロフェッショナルとしての誇りを持って働いているかを、肌で感じています。

今回は一経営者として、また医療・介護の現場を熟知する者として、「介護職の給与の低さ」について、制度的な背景、現場の課題、そして今後必要な変化について考えてみたいと思います。


■ 介護職の給与の実態とは?

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、介護職員の平均年収は約371万円。これは、全産業の平均(約460万円)と比べて約90万円も低い水準です。

加えて、夜勤や休日出勤、感情労働(人間関係・感情のコントロール)といった負荷を考えると、「低賃金・重労働」という構図は明らかです。

では、なぜここまで給与が低く抑えられているのでしょうか?背景には、以下のような構造的要因があります。



■ 給与が上がらない理由:制度と構造の限界

介護報酬制度の限界介護職の給与は、事業者の収入である「介護報酬」から支払われます。この報酬は国が定めており、自由に価格設定することはできません。報酬単価が低ければ、当然ながら職員の給与にも限界が生じます。

人手不足と離職率の高さ慢性的な人手不足により、現場の一人あたりの業務負担が増加。そのわりに給与が上がらず、やりがいと待遇のギャップにより離職する人が後を絶ちません。結果的に経験者が定着せず、スキルの継承も困難になっています。

介護職の専門性が過小評価されている「誰でもできる仕事」という誤解が未だに根強く残っています。実際には、高齢者の身体状況を見極め、安全に生活支援や入浴・食事介助を行うには、高度な観察力と判断力が求められます。



■ 経営者として感じるジレンマ

私自身、できる限り職員の待遇を改善したいと日々考えています。しかし、現行の介護報酬制度のもとでは、事業者の裁量だけで給与を大きく引き上げるのは難しいのが現実です。

実際、職員の処遇改善加算(※)を取得していても、それが安定した給与アップに直結しないケースもあります。なぜなら、加算を得るには職員の配置や記録業務の厳格な運用が必要であり、逆に管理業務が増えることで現場が疲弊することもあるからです。

※処遇改善加算:介護職員の賃上げを目的とした国の支援制度



■ それでも“変える”ために、必要な視点とは?

では、どうすれば介護職の待遇は改善されるのでしょうか。私は次の3つの視点が不可欠だと考えます。

● 1. 制度の根本的見直し

現在の介護報酬制度は「効率性」重視で、現場の実情に十分応えていません。国は財源の制約を理由に報酬改定を抑えていますが、このままでは人材流出が止まらず、介護サービスそのものが持続できません。

● 2. 職業としての“誇り”と“評価”を両立させる

介護職は、高い専門性と倫理観が求められる仕事です。資格や研修制度を活かし、「スキル=給与」に反映させる仕組みを強化することが必要です。

● 3. 経営者の意識改革

収支のバランスを見ながらも、まずは現場に最大限のリスペクトを持つこと。待遇を少しずつでも改善し、「ここで働いて良かった」と言ってもらえる職場をつくる努力を続けることが、長期的には離職防止や人材定着につながります。



■ 読者の皆さんへ:共に考えていくために

介護職の給与の低さは、単なる職種の問題ではありません。これは、誰もが高齢になる時代において「どんな社会をつくりたいか」という価値観の問題です。

そして、今後私たち一人ひとりが「支える側」に回る可能性がある以上、この課題は“自分ごと”として考えていくべきだと思います。

介護を「コスト」ではなく「投資」として捉え、人の尊厳と命を支える仕事に対して、正当な評価と報酬を。

その第一歩として、私たちができることは、現場の声に耳を傾け、制度の矛盾や課題に目を背けず、社会全体で議論を深めていくことだと考えています。


 
 
 

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