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介護現場の生産性向上にひと言。効率だけで測れない「ケアの本質」本文:

  • 執筆者の写真: 諒 加藤
    諒 加藤
  • 5月16日
  • 読了時間: 3分

【生産性向上が求められる介護業界の現在地】

近年、介護業界では「生産性向上」という言葉が頻繁に使われるようになってきました。背景には、高齢化の進行に伴う介護ニーズの増加と、慢性的な人材不足があります。国も自治体も、業務の効率化やICT導入を促進し、限られた資源でより多くの利用者に質の高いサービスを届けることを目指しています。



たしかに、業務の無駄を見直し、必要なところに人手を集中させることは重要です。私自身も、訪問介護や訪問看護を提供する中で、業務フローの見直しやICT活用に積極的に取り組んできました。しかし、現場に立つスタッフの声に耳を傾けると、ただ「効率化すればいい」という発想には限界があることに気づかされます。



【現場の実情:効率と向き合う日々の葛藤】

介護の現場では、記録業務の電子化やスケジュール調整の自動化など、さまざまな工夫が導入されています。しかし、現場スタッフからは、「効率化によってケアの時間が圧縮されてしまう」「利用者一人ひとりとじっくり向き合う余裕がない」という声も聞かれます。



介護は単なる「作業」ではありません。排泄介助や移乗、清拭などの動作一つひとつには、利用者との対話や観察、安心感の提供が含まれています。そこに込められた「気づき」や「共感」は、ケアの質を大きく左右する要素です。単純な効率追求が、この部分を削ぎ落としてしまっては、本末転倒です。



【経営者としての視点:効率と人間性の共存を目指して】

私は「生産性向上=介護の時間を削ること」ではないと思っています。むしろ、記録の簡略化や移動時間の最適化などを通じて、「ケアに集中できる環境を整えること」こそが本来の目的であるべきです。



たとえば、紙で行っていたバイタル記録をタブレット入力に切り替えたことで、1件あたりの記録時間が3分短縮できたとします。その浮いた3分を、利用者との雑談やちょっとした観察に充てられるなら、それは「質の向上」でもあるのです。



生産性向上とは、ケアの本質を守るための「手段」であるべきです。そのためには、現場の声に耳を傾けながら、無理のない改善を積み重ねる必要があります。一方的なシステム導入や、現場不在の業務改革は、かえって現場の負担や混乱を招くこともあります。



【「効率化」によって削ってはならないもの】

介護の本質は、「人と人との関わり」です。利用者のちょっとした表情の変化や、日々の会話の中にこそ、体調や心理状態の変化を読み取るヒントがあります。それはAIでもマニュアルでも代替できない、人間だからこそ感じ取れるものです。



だからこそ、私たち経営者が考えるべきなのは、「どこを効率化し、どこを守るのか」という選択です。

・定型業務はICTや介護ロボットに委ねる・判断や関係性が求められる部分は人の手を残す・利用者満足を指標に加え、件数主義からの脱却を図る・現場との対話を重ね、納得と協働のある改善を進める

これらの取り組みを通じて、「現場が主役」の生産性向上が実現できると考えています。



【おわりに:介護の未来に必要なのは“共感”と“仕組み”の両立】

これからの介護業界には、「効率」と「共感」の両立が求められます。単に業務を早く終わらせることではなく、「大切なことに時間を使えるようにする」ことこそが、生産性向上の本質ではないでしょうか。

私たちは、制度や方針に振り回されるのではなく、現場の視点を忘れずに、持続可能でやりがいのある介護の形を模索し続ける必要があります。その第一歩として、まずは「効率化の意味」を問い直し、現場とともに歩む姿勢を大切にしていきたいと、私は思います。


 
 
 

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